大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

静岡家庭裁判所 昭和42年(少)1636号 決定 1968年1月19日

少年 H・Y(昭二三・三・二四生)

主文

本件を静岡地方検察庁検察官に送致する。

理由

一、罪となる事実

少年は、妻H・S枝が昭和四二年一二月○○日午前一〇時三〇分ころ、静岡市○○×丁目○○番○○号○○アパートにおいて女児を分娩したのであるが、これが養育に苦慮の末、右女児を殺害しようと決意し、H・S枝と共謀の上、同所において同女児をボール箱に入れて同日午後九時三〇分ころ、静岡県榛原郡○○町○○××××の○○番地先の○○海水浴場海岸まで運搬し同海岸において箱もろ共、同女児を砂中に埋めたが、たまたまこれを目撃した○浦○司(三〇歳)外一名の届出を受けて現場に急行した榛原警察署警察官により救出されたため、殺害の目的を遂げるに至らなかつたものである。

二、適条

刑法第二〇三条、第一九九条、第六〇条

三、処分理由

少年は、昭和三八年三月中学校を卒業後翌四月磐田市の両親の下を離れて静岡市内の○島屋書店に店員として就職するかたわら定時制○○商業高等学校に通学し、その後職を転々しつつ昭和四二年三月同校を卒業したが、これより先、同校の上級生であつたH・S枝(旧姓M)と知り合い、昭和四一年一〇月ごろから同棲を始め、卒業後の昭和四二年六月○○日婚姻の届出によつて正式な妻とし、同年一二月○○日わが子の出産を見るに至つたが、自己の収入のみでは子を養育することができないと考え、本件犯行に及んだものである。

少年は、過去において三回道路交通法に違反し、いずれも当裁判所において審判不開始あるいは不処分に終わつているが、その性格は自己中心的傾向が特に強く、多くの問題点を有つ一方、本件は動機的に多少愍諒すべき点もあるが、人道上許すことのできない悪質な犯行であり、また一般世人に与える影響を考慮すると、この際刑事手続を通じて処遇するのが相当であると思料する。よつて、少年法第二三条第一項、第二〇条本文により主文のとおり決定する。

(裁判官 相原宏)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例